
PAエンジニアがリハーサルで行う6つのこと
ライブなどでは必ずと言って良いほど行われる「リハーサル」ですが、そのリハーサルの中でPAエンジニアがどんなことをしているのか?というのは意外と知られていないかもしれません。
この記事では、そんな疑問にお答えする形でPAエンジニアがリハーサルの時にどんな作業をしているかを解説していきたいと思います。
目次
リハーサルの目的って何?
そもそも、リハーサルをやる目的ってなんなのでしょうか?
よく勘違いされるのは「リハーサルはバンドが演奏の練習をする場」ということです。
これは大きな間違いです。
練習はライブハウスでするものではなく、スタジオでやってくるものですよね。。。
それでもバンド初心者などはリハーサルの時に曲の練習を始めてしまう時も多いですね(笑)
本来、リハーサルというのはPAエンジニアが
- 本番の時に出来るだけ良い音をお客さんに届けるための音の調整
- 演者が演奏しやすいような演奏環境の構築
を行うためにあるものです。
後で説明しますが、これを行うためには、リハーサルの時間はとても短いです。
集中してやっていかないとこなしきれない作業量です。
そんな中で曲の練習とかをされると調整に使える時間がなくなってしまいます。
これは、本番の音が狙った音よりも悪くなってしまう可能性があるということを意味しています。
最終的な目的は、ライブに来ていただいたお客さんに良い音で演奏を楽しんでもらうことです。
それを実現させるようなリハーサルでなければ意味がないですよね。
この目的をしっかりと認識してPAエンジニアも演者もリハーサルをやることが重要ですね!
PAエンジニアがリハーサルで行なっている6つのこと
それでは、リハーサルにおいてPAエンジニアが行なっていることを解説していきます。
PAエンジニアは、基本的にはリハーサルで以下の6つのことを行なっています。
- 各インプットチャンネルの音量の調整
- 各インプットチャンネルのEQ(イコライザー)の調整
- 各インプットチャンネルのコンプレッサー、ゲートの調整
- リバーブなどのエフェクトのかかり具合の調整
- メインスピーカーから出す音のバランス調整
- 演者用のモニタースピーカーから出す音のバランス調整
それでは、1つずつ具体的な作業内容を解説していきます。
各インプットチャンネルの音量の調整
まず最初に行うのが、各インプットチャンネルの音量の調整です。
PAシステムは、マイクから入力した音をミキシングコンソールに送ることから始めるのですが、その音をミキシングコンソールに入力するためのマイクのメーカーや機種によって、入レベルが変わってきてしまいます。
最終的には、本番の音量の上げ下げはフェーダーを上下に動かすことで調整するのですが、入力レベルが違いすぎると、全てのチャンネルを同じ感覚で音量調整できません。
そのインプット音量レベルを上げ下げ(基本的には上げる)ためにミキシングコンソールに備わっているのが「Gain(Trimと呼ばれる場合もあり)」という機能です。
この機能を使って各インプットチャンネルの音量を調整していきます。
ちなみに、ミキシングコンソールにおけるGainとフェーダーの位置は以下をご覧ください。
(機種はYAMAHA MG12XU)
この作業を使用するインプット回線の数だけ行います。
各インプットチャンネルのEQ(イコライザー)の調整
各インプットチャンネルの音量が調整できたら、次に行うのは「音質」の調整です。
マイクから入ってきた音は、マイクというフィルターを通してミキシングコンソールに入ってきます。
そうなると、本来の音(生音)とは異なることが多々あります。
PAの基本は、原音のまま音量を大きくしてスピーカーから出してあげることです。
しかし、マイクというフィルターを通した瞬間に生音とは違う音になってしまう場合があります。
これを補正するのがPAエンジニアがリハーサルでやるべき作業の1つです。
その補正に使用するがEQ(イコライザー)です。
実際のミキサーでいうと以下の赤枠の部分がEQです。
このEQの機能は、ミキシングコンソールの機種によって異なります。
今回例に挙げているYAMAGA MG12XUの場合は、「HIGH」「MID」「LOW」の3つのツマミだけしかついておらず、固定の周波数帯の音を上げ下げすることしかできないため、あまり細かな調整はできません。
一方、ハイクラスのアナログミキサーやデジタルミキサーの場合は、調整する周波数帯、その帯域の幅、音量などを細かく設定できます。
僕の場合はべリンガーのX32というデジタルミキサーを使用しておりますので、結構細かな調整ができます。
EQの調整の基本は「不要な音を削る」です。
スピーカーから出した時に耳障りな音や聞こえにくい帯域の音を削っていくという作業ですね。
これを行う時に削る帯域を選べないミキサーなどの場合は、適切な音質調整ができない場合がでてきてしまいますよね。
各インプットチャンネルのコンプレッサー、ゲートの調整
次に行うのがコンプレッサー、ゲートというエフェクターの調整です。
コンプレッサーやゲートは、エフェクターの一種で、入ってきた音そのものに変化を加えるために使われることからダイナミクス系エ
フェクターと呼ばれています。
コンプレッサーは
- 音量の均一化
- 音圧の向上
を目的として使用されます。
例えば、シャウト系のボーカリストがいたとします。
基本的には普通に歌を歌っている時の音量レベルとシャウトした時の音量レベルを比べると後者の方が大きくなります。
ただし、シャウトを基準に音量を調整してしまうと、普通に歌っている時の音量が小さくなってしまいます。
この問題を解決するのがコンプレッサーです。
コンプレッサーによってシャウト時の音量を抑えてあげることで、普通に歌う部分音量に影響を与えることなくシャウトの音量を下げることができるのですね。これはとても便利ですよね。
このような調整もリハーサルの中で行います。
そして、ゲートというのは、ある音量以上の音が入力された時にだけ音を出すことができるエフェクターです。
ドラムのキック(バスドラム)やタムなどに使われることが多いですね。
ドラムは、複数のマイクを使用して音を拾う「マルチマイキング」という方法をとる場合が多いですが、そうなると音のカブリというのが問題になってきます。
例えば、タムの音を拾うマイクにタムの音量と同じくらいスネアの音が入ってしまっていたら、音の調整がしにくいですよね?
出来ることなら、タムにはタムだけの音、スネアにはスネアだけの音が入るようになると良いのですが、なかなか難しいですね。
この問題を解決するためにゲートが使われます。
例えば、タムにゲートを使用すると、タムの音が鳴らない時にはタムのマイクは無音状態(スネアなどの他のタイコのカブリ音が出ない)にすることができます。
つまり、タムを叩いた時だけ音を送るということができるのですね。
こうすることで、余分な音がカットされてよりクリアな音を提供することができるんですね。
リバーブなどのエフェクトのかかり具合の調整
ライブ時に欠かせないのが「リバーブ」などのエフェクトです。
リバーブというのは、響きを加えてくれるエフェクターで、ライブの臨場感をより演出してくれる必須ツールです。
リバーブは、調整次第で雰囲気が大きく変わります。
リバーブの効き具合によっても変わるし、低音だけにリバーブをかける、高音だけにリバーブをかけるというような調整もリハーサルの中で行うことになります。
基本的な調整は、リハーサルが始まる前にPAエンジニアが自分の声を使って調整するのが一般的ですが、バンドごとにリバーブの設定を変更する場合もあります。
この調整はとてもシビアですので、リバーブの調整をしている際には、絶対に楽器の音などを出すのはやめましょう。
メインスピーカーから出す音のバランス調整
チャンネルごとの音量・音質・エフェクトの設定が完了したら、最後に実施するのはそれらの音をミックスする作業です。
ここでよくある現象は、チャンネルごとの調整の時にはいい感じだったのに、全体でミックスした瞬間「あれ???」ということになるのはよくあることです。
「単体で良い音」≠「合わせも良い音」
ということですね。
最終的にお客さんが聞くのは、各チャンネルの音をすべて混ぜた音です。
ミックスには、経験はもちろんのこと、センスも必要だと思っています。
PAエンジニアは、普段から様々な音源を聞いて「バランスの良いミックスとは?」というのを突きつめ、センスを磨く必要があるということですね!
演者用のモニタースピーカーから出す音のバランス調整
PAエンジニアが出す音は、お客さんに向けられたメインスピーカーの音だけではありません。
演者側に向けられたモニタースピーカーから出る音も対象です。
大規模なライブイベントなどでは、モニターを調整するための専用のミキシングコンソールを準備して、専属のPAエンジニアが調整を行う場合もありますが、僕らのようなアマチュアPAの場合は、基本的には1台のミキシングコンソールでメインスピーカーとモニタースピーカーの調整を行うことになると思います。
モニタースピーカーは、メインスピーカーとは異なり「演奏に必要な音のみを出す」というのが基本です。
しかし、どの音を出してもらいたいかは演者次第です。
演者に合わせたモニタースピーカーの音の調整は結構大変です。
モニタースピーカーの数が多くなればなるほど、調整作業は大変になっていきます(笑)
まとめ
PAエンジニアがリハーサルで行なっている6つのことを解説させていただきましたがいかがでししたでしょうか?
意外と多くのことを、あの短い時間でこなしているということはご理解いただけたのではないでしょうか?
PAエンジニアも演者も「良いライブにしたい」という気持ちは一緒です。
どうやったら良いライブにできるか?ということを常に考えつつ、リハーサルをしっかりと活用していきましょう!
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